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安全衛生法改正について(2019年4月1日)

2019年4月から、下図のとおり順次法改正が施行されています。

産業医の機能の強化

1.産業医の義務等

長時間労働により健康が害される中、産業医の役割がこれまで以上に重要になっています。産業医の義務や対応について、次のとおり定められました。

①産業医は、労働者の健康管理を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実に職務を行わなければならない。

②会社は、産業医が辞任したときまたは解任したときは、遅滞なく(おおむね1ヶ月以内)その旨、理由を衛生委員会または安全衛生委員会に報告しなければならない。

③産業医を選任した会社は、産業医の業務内容その他定められた事項を常時各事業場の見やすい場所に掲示し、または備え付けるなどして労働者に周知させなければならない。

上記の他、会社は産業医への情報提供が義務付けられました。

会社から産業医へ情報提供

提供すべき情報

①健康診断実施後の措置、長時間労働者に対する面接指導実施後の措置、ストレスチェック検査に基づく面接指導実施後の措置または講じようとするこれからの措置内容

②時間外・休日労働が月80時間超の氏名、労働時間

③その他、産業医が労働者の健康管理を適切に行うために必要と認めるもの(労働者の作業環境、労働時間、作業態様、作業負荷の状況、深夜業の回数や時間数など)

※①はおおむね1ヵ月以内、②③はおおむね2週間以内

産業医から会社へ勧告

産業医は、労働者の健康を確保するために必要なときは、会社に対し、必要な勧告をすることができる。(記録は3年間保存)
産業医は、予め勧告の内容について、会社の意見を求めること
会社は、産業医の勧告を尊重しなければならない

会社は衛生委員会(または安全衛生委員会)に報告

なお、これらは、常時使用する労働者50人以上の事業場の、産業医を選任する義務のある事業場についてのことです。産業医を選任する義務のない規模の事業場については、努力義務とされています。

2.産業医に対する権限の付与

事業主が産業医に付与する権限には、次のものが含まれます。

  • 事業者または総括安全衛生管理者に対して意見を述べること
  • 産業医の職務を実行するために必要な情報を労働者から収集すること
    →産業医の職務は・・・
    • 健康診断・その結果に基づく措置
    • 長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
    • ストレスチェック、高ストレス者への面接指導・その結果に基づく措置
    • 作業環境の維持管理
    • 作業管理
    • この他、労働者の健康管理に関すること
    • 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進
    • 衛生教育
    • 労働者の健康障害の原因の調査、再発防止
  • 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること
3.労働者の心身の状態に関する情報の取り扱い

労働者の心身の状態に関する情報の取り扱いについても、定められました

  • 会社は、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、使用するにあたっては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で収集し、目的の範囲内で保管、使用しなければならない。
    ただし、本人の同意がある場合や正当な事由がある場合はこの限りでない。
  • 会社は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
  • 厚生労働省は、会社が策定すべき取扱規程の内容、策定方法、運用などについてとりまとめた「指針(別紙)」を公表している。

労働時間の把握

会社は、労働時間を把握することが義務づけられています。
改正により、これまで対象外とされた「管理監督者」や「みなし労働時間制(裁量労働制)」で働く人も対象になります。医師の面接指導を確実に実施し、健康管理をするために、これらの人も労働時間を把握する必要があるからです。
また、これまでは「ガイドライン」によるものでしたが、法律(労働安全衛生法)に定められました。
なお、派遣労働者の労働時間は派遣先で把握しなければならず、医師の面接指導は派遣元が行う必要があります。

医師の面接指導の対象拡大/h4>

1.医師の面接指導の対象拡大

①医師の面接指導は、長時間労働で披露が蓄積した労働者の健康の状況を把握し、本人に対して指導を行うとともに、結果をふまえて会社が措置を講じるものです。長時間労働と脳・心臓疾患の発症が関連性が強いと言われているため、義務づけられているものです。
対象者が時間外・休日労働月80時間超に拡大されました。

・時間外・休日労働が月100時間超で
・疲労の蓄積が認められる
・本人からの申出
・時間外・休日労働が月80時間超で
・疲労の蓄積が認められる人
・本人からの申出

②研究開発業務に従事する人で、時間外・休日労働が月100時間超の人は、申し出がなくても、面接指導を実施することになりました。
100時間を超えない場合でも、80時間超で疲労の蓄積が認められる人から申し出があれば、他の労働者と同様に面接指導を行う必要があります。
研究開発業務については、2019年3月31日(中小企業は2020年3月31日)までに締結した改正前の36協定が有効である間は、猶予されます。

③高度プロフェッショナル制度対象者で月100時間超の時間外・休日労働の人も、申し出なしに医師の面接指導を受けさせなければなりません。

2.労働者への労働時間に関する情報の通知

時間外・休日労働を何時間したのかわからなければ、労働者が医師の面接指導を申し出ることもできません。
会社は、時間外・休日労働の時間が1ヵ月あたり80時間を超えた労働者に対して、その情報を通知することになりました。対象者は、高度プロフェッショナル制度の労働者を除くすべての労働者で、管理監督者、みなし労働時間制の労働者も対象になります。
研究開発業務に従事する人には、月100時間を超えた時に時間外・休日労働時間数を通知する必要があります。

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