働き方改革 同一労働同一賃金①パートタイマー、有期雇用労働者 - 社会保険労務士に相談をお考えなら | 大阪の社会保険労務士事務所【インプルーブ社会保険労務士法人】にご相談ください
     

働き方改革 同一労働同一賃金

①パートタイマー、有期雇用労働者

Q 同一労働同一賃金とは何ですか?

A 簡単に言うと、「同じ仕事をする人には、時間あたりの単価で同じ賃金を払わなければならない」「正社員とパートタイマー・有期雇用労働者の間で不合理な待遇差があってはならない」という考え方です。

しかし、「正社員とパートタイマー・有期雇用労働者とでは責任が違う」という会社もあります。責任の違いがあれば違いとのバランスがとれる程度の待遇の差があっても構わないとされています。詳しくみていきましょう。
なお、均等・均衡を求められるのは、「パートタイマー・有期雇用労働者」と「正社員」であって、正社員と正社員などはここでは問題になりません。

Q 正社員とパートタイマー・有期雇用労働者の仕事が同じかどうかを見るとき、どこに着眼しますか?

A 考慮するものとして、次のように書かれています。すべて同じであれば、同じ待遇にしなければなりません。(均等待遇)

  • ① 職務内容(=業務の内容+責任の程度)
  • ② 職務内容・配置の変更範囲
①「職務の内容」(=業務の内容+責任の程度)の判断基準

「仕事内容が同じで責任も同じ」かどうかの判断は、次の手順で確認します。

「業務の種類」が実質的に同じ

「厚生労働省編職業分類」の細分類を目安として比較することとされています。例えば、営業事務員であれば、仕入係事務員、販売係事務員、営業事務員・・・が細分類です。

「中核的業務」が同じ

次に「中核的業務」を比較します。これも同じであれば、業務の内容は「実質的に同じ」と判断します。
具体的には、職務を業務分担表、職務記述書などにより分割し、その中から「中核的業務」を抽出します。「中核的業務」とは、以下の基準をもとに総合的に判断します。

  • 与えられた職務に本質的または不可欠な要素である業務
  • その成果が事実に対して大きな影響を与える業務
  • 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務
「責任の程度」が著しく異なっていない

「責任の程度」は次の着眼点で判断します。

  • 与えられている権限の範囲(単独で契約締結できる金額の範囲、部下の数、決裁権限の範囲など)
  • 成果について求められる役割
  • トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
  • ノルマなど成果への期待の程度
  • 所定外労働の有無、頻度(可能性があるかどうかなど、形式的な判断ではなく、実態で判断)
「職務の内容及び配置の変更の範囲」

次に、「職務の内容及び配置の変更の範囲」をみます。わかりにくいですが、「変更の範囲」は「職務内容」と「配置変更」にかかっています。
仕事内容や役割変更、人事異動がどの範囲まであるのか、転勤や昇進を含めその範囲を総合的に判断します。

例えば、一部の部門内での人事異動だけの人と、全部門にわたっての人事異動の可能性がある人では、「配置の変更の範囲が異なる」となります。
「範囲」は完全に一致しなくても、「実質的に同じかどうか」で判断します。
変更の範囲は、将来の見込みについても考慮しますが、事業主の主観だけではなく、文書や慣行など客観的な事情が必要です。

判断は、次の手順で行います。

転勤の有無が同じ
 
全国転勤の可能性があるのか、エリア限定などの範囲が同じ
 
職務の内容の変更の有無が同じ
 
職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲が同じ
Q 「均衡待遇」を判断する上では、何を比較しますか?

A ここまでは、仕事内容や責任の程度、配置転換の範囲が社員と同じであれば、同じ待遇が求められる、ということを見てきました。(均等待遇)
ここからは、「不合理な待遇の禁止(均衡待遇)」を見ていきます。これまでの①職務内容(=業務の内容+責任の程度)、②職務内容・配置の変更範囲 に加えて、③その他の事情も考慮されます。

  • ③ その他の事情
    職務の成果、能力、経験、合理的な労使慣行、事業主と労働組合との間の交渉といった労使交渉の経緯など

つまり、「パートタイマー、有期契約労働者だから」という理由による差別的取扱いは禁止されますが、成果や能力、経験などの違いによる待遇差は認められるということです。

Q 「均衡待遇」の待遇は何をさしますか?

A 均衡待遇は、基本的に、すべての賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇などすべての待遇が含まれるものであり、個々の待遇ごとに判断されます。

判断を明確化するため、ガイドライン(指針)が出されており、同じ会社内での正社員とパートタイマー等との間で、どのような待遇差が不合理なのか、原則の考え方と具体例が書かれています。(次表に簡単にまとめました)
法施行までに、自社の賃金、手当等を1つずつ検討しておく必要があるでしょう。
また、このガイドラインに書かれていないものでも、不合理な待遇差がないようにしなければなりません。

<基本的な考え方と例>
基本給

能力や経験に応じて支給する場合は、正社員と同一の能力・経験を持つパートタイマー等には、能力・経験に応じた部分について同一の基本給を、違いがある場合は、違いに見合った基本給を支給しなければならない。

業績や成果に応じて支給する場合や勤続年数に応じて支給する場合も考え方は同じ。

昇給についても、正社員と同様に勤続により能力が向上した場合は、勤続による能力の向上に応じた部分について、正社員と同一の昇給を、違いがある場合は、違いに見合った昇給を行わなければならない。

なお、賃金の決定基準・ルールに違いがある場合は、①職務内容、②職務内容・配置変更の範囲、③その他の事情のうち、その待遇の目的に照らして不合理なものであってはならない。

また、定年退職後に継続雇用された期間雇用者も、この法律の適用を受ける。この場合は、定年再雇用者であることが「その他の事情」に該当し、待遇についての様々な事情を考慮して、違いが不合理かどうか判断される。

賞与

貢献に応じて支給する賞与について、正社員と貢献が同一であれば、貢献に応じた部分は同一の賞与を支給しなければならない。一定の違いがある場合は、その違いに応じた賞与を支給しなければならない。

手当

①役職手当
正社員と同一の内容の役職に就くパートタイマー等には、同一の役職手当を支給しなければならない。役職の内容に一定の違いがある場合には、その違いに応じた役職手当を支給しなければならない。

②特殊作業手当
正社員と同一の危険度または作業環境の業務に従事するパートタイマー等には、正社員と同一の特殊作業手当を支給しなければならない。

③交替勤務手当
正社員と同一の勤務形態で従事するパートタイマー等には、正社員と同一の交替勤務手当を支給しなければならない。

④精皆勤手当
正社員と業務の内容が同一のパートタイマー等には、正社員と同一の精皆勤手当を支給しなければならない。

⑤時間外労働、深夜労働、休日労働手当
正社員と同一の割増率等で手当を支給しなければならない。

⑥通勤手当、出張旅費
正社員と同一の通勤手当、出張旅費を支給しなければならない。
所定労働日数が一定以上の場合に定期券、一定以下の場合に日額の交通費を支給することは構わない。

⑦食事手当(労働時間の途中の食事のための食費負担補助)
正社員と同一の食事手当を支給しなければならない。

⑧単身赴任手当
正社員と同一の支給要件を満たすパートタイマー等には、正社員と同一の単身赴任手当を支給しなければならない。

⑨地域手当
正社員と同一の地域で働くパートタイマー等には、正社員と同一の地域手当を支給しなければならない。正社員には転勤があることから、全国一律の基本給に加えて地域手当を支給しているが、パートタイマー等は各地域で採用し、地域の物価が基本給に盛り込まれているため、地域手当を支給しない場合は構わない。

福利厚生

①福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室をいう)
正社員と同じ事業所で働くパートタイマー等には、正社員と同一の福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用を認めなければならない。

②転勤者用社宅
正社員と同一の要件を満たすパートタイマー等には、社員と同一の転勤者用社宅の利用を認めなければならない。

③慶弔休暇、健康診断による勤務免除と給与の保障
パートタイマー等にも正社員と同一の慶弔休暇、健康診断による勤務免除と給与の保障をしなければならない。

③病気休職
パートタイマー(期間雇用者を除く)には、正社員と同一の病気休職の取得を認めなければならない。また、期間雇用者にも、労働契約が終了するまでの期間を踏まえて病気休職の取得を認めなければならない。例えば、労働契約が1年の期間雇用者に、病気休職は期間満了までとすることは構わない。

④法定外休暇(慶弔休暇を除く)で勤続期間に応じて取得を認めるもの
正社員と同一の勤続期間のパートタイマー等には、正社員と同一の法定外の休暇(慶弔休暇を除く)を付与しなければならない。
期間雇用者の場合は、当初から通算の勤続期間を評価しなければならない。
ただし、例えば、所定労働時間が少ない労働者に所定労働時間に比例した日数を付与することは構わない。

その他

①教育訓練
現在の職務の遂行に必要な技能または知識を習得するために実施する教育訓練は、正社員と職務内容が同一のパートタイマー等には、正社員と同じ教育訓練を実施しなければならない。職務の内容に一定の相違がある場合は、その相違に応じた教育訓練を実施しなければならない。

②安全管理措置
正社員と同一の業務環境に置かれているパートタイマー等には、正社員と同じ安全管理措置をしなければならない。

Q 法律はいつから施行されますか?

A 法律は2020年4月1日(中小企業は2021年4月1日)から施行されます。ただし、労働者派遣についての同一労働同一賃金は、派遣元(派遣先)が中小企業であっても2020年4月1日から施行されます。

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